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ホーム 響子side

 

 『響子side』

「冗談じゃないわ、まったく」
 
綺麗なままの床を見下ろし、すでに消えて無くなってしまった危険の元凶に、苦々しい顔で悪態をつく。
 
「許せないわ。跡形もなく消えてくれちゃって。
もし髪に燃え移っていたら、誰に慰謝料を請求すればいいのよ?」
 
焼け残っていたところで支払い能力はあるのかとか、髪で済まなかったらどうするのかなどは、この際関係ないらしい。
大事な髪を危険にさらされたまま、あくまで犯人不在というのがお気に召さないようだ。
 
すっかりやる気を放棄した響子は、手鏡でどこにも異常がないのを確認すると、おもむろに流しを掃除し始めた。
嫌なことがあったり機嫌が悪くなったりすると、何故かキッチンを掃除し始めるクセがあるのだ。
茶だんすから全部の皿やカップを出さないところを見ると、まだ臨界点には達していないようだ。
 

「あーあー。機嫌が悪いねぇ。このまま放りだしちまうのか?」
 
ざかざかとケーキ皿を磨いていると、ふいに小さな光の玉が近付いてきた。
ふよふよと浮いているそれは、くるくる回る朱色の炎をまとっている。
炎の隙間から、爬虫類のような目をしたミニサイズのドラゴンが、ちろっと顔をのぞかせた。
 
「なによ、ガレシュ。口出ししないでちょうだい」
「そんな気はねーけどよ。最近、オレ様たちの世界も騒がしくて、なんか気になるんだよな」

「………まさか、今のアナタの仕業じゃないでしょうね?」
 
「だ、誰がそんなことするかよ。普通の人間ならともかく、アンタ相手に、んなイタズラなんかしてみろ。あとでどんな報復が…っと、やべ、いや、なんでもねーようん」
 
飛ぶ鳥も凍り付くような横目でにらまれ、ガレシュは慌てて首を振った。
心なしか、朱い体色が、薄くなったようにも見える。
 
「もう言ったかしら。私…当分、火は見たくないのよねぇ」
 
すすいだ皿の輝き具合を眺めなら、響子は誰にともなくつぶやいた。
口元が微かに笑っているのは気のせいだろうか。
なんだか目まで光っているような気がする。

「ぅおっと、オレ様としたことが、今日は忙しーのを忘れてたぜ! ま、なんか情報あったら呼べよな。気が向いたら協力してやらなくもねぇぜ。じゃあな!」
 

しゅるるっと渦を巻くように宙に消えたのを見ると、あきれたようにつぶやいた。
 
「何が気が向いたら、よ。
やっぱり人捜しは、その道のプロにまかせるのが一番よ。あとは草壁が頑張ってくれるでしょ」
 
 
明らかにやっかい事の気配を感じ取った響子は、誰がなんと言わおうと、早々に手を引くことに決めたのだった…。
 
 

 

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